前回の記事では、日本にある世界遺産の中から中国地方・九州エリアに絞って6か所ほど紹介しました。
といっても日本にはまだたくさんの世界遺産が存在します。
そこで今回取り上げる地域は「北海道・東北エリア」。
北海道・東北エリアにある世界遺産を5か所ほどピックアップし、その歴史を踏まえながら詳しく紹介していきたいと思います。
日本人である以上、海外の世界遺産に目を向けるるより、まずは日本の世界遺産に目を向け、その歴史や文化に触れることが大切ではないでしょうか?
近くにあるからこそ見落としがちな日本に存在する世界遺産。
近場でこんな貴重な体験をできる場所があるのなら、人生で一度は触れておきたいですね。
今後、北海道・東北エリアに旅行に行く機会がある人は、ぜひ旅行先を選ぶ際の参考にしてください。
橋野鉄鋼山(明治日本の産業革命遺産ー製鉄・鉄鋼・造船・石炭産業ー)
橋野鉄鉱山は「近代製鉄発祥の地」と呼ばれており、2015年7月に登録された比較的新しい世界遺産です。
江戸時代末期、鎖国していた日本に開国を迫る欧米に対抗するための大砲製造が必要でした。
その鉄を作るために建設されたのが岩手県に位置する「橋野鉄鉱山」の始まりです。
当時国内最大の鉄鉱山であったこの地は、最盛期には1000人以上の従業員が働いていたと言われており、幕末から明治時代にかけて日本の近代製鉄業を支えていたと考えられています。
当時盛岡藩士であった大島高任が江戸や長崎で製鉄技術を学んでいたこと、また製鉄に必要となる良質な鉄鉱石が採掘されることから、この場所に国内最大の鉄鉱山が作られたのです。
橋野鉄鉱山は現存する「日本最古の洋式高炉跡」であり、国の文化財にも指定されています。
この地には3つの高炉があり、すべて大きな花崗岩が約5メートル四方のほぼ正方形に囲う形で4段、5段ほど積み上げられた状態で残っています。
その内側には現在残っていないものの、レンガを組み立て、その内部の炉で鉄鉱石を加熱して鉄を作ってたそうです。
この鉄の大量生産を可能にする技術が後にできる八幡製鉄所へと繋がっていきます。
現在インフォメーションセンターにはガイドさんがいらっしゃるため、ガイドさんと一緒に観光するとより深い歴史的背景を知ることができて楽しめます。
白神山地
1993年12月、白神山地は屋久島とともに日本初の世界自然遺産に登録されました。
青森県と秋田県に広がるこの山岳地帯には、ブナの原生林が広がっており、ブナの原生林の大きさとしては世界最大級規模なのです。
山火事や水害によって壊される森は少なくないのですが、この白神山地は自然災害によって壊されることなく、約8000年~1万2000年もの長い月日を今も生き延びています。
戦後復興のために建築木材が必要になった際、建築向けであるヒノキやスギの木の需要が高まり、曲がりやすくて腐りやすい建築向きではない国内のブナは大量に伐採され、代わりにヒノキやスギが植樹されていきました。
そのせいでブナ林に住んでいた野生動物は住む場所を無くし、生態系に深刻な影響を与えたと言われています。
しかし白神山地は人間が簡単に入れる場所ではない山奥にあったことから、運良く手つかずのまま現代に残されています。
このように、長い歴史の中でブナの原生林がこの規模で現存している事自体が世界でも珍しく、素晴らしい環境に恵まれている場所なのです。
そんな白神山地には、手軽に散策できるコースから本格的な登山コースまで、自然を満喫できるコースが複数設定されています。
ぜひ緑が豊かになる5月下旬以降や紅葉の10月中旬、下旬に訪れてみてください。
手軽な散策コースの目安時間は約40分~1時間と簡単に散策することができますよ。
また点在する湖沼を見ながら広葉樹林を楽しむ「十二湖散策コース」や、歩きやすい遊歩道を進みくろくまの滝を目指す「くろくまの滝散策コース」なども用意されています。
中級者向けの登山コースは、目安所要時間が3時間~8時間と幅広くコースが設定されているのもポイント。
半日から1日かけて登山するこれらのコースは、山頂を目指すためブナと白神山地の景色の両方を満喫できるでしょう。
ただし冬には降雪状況によって道路が閉鎖されていることもあるので事前確認が必要です。
知床
2005年7月に国内で3番目の世界自然遺産に登録された知床。
知床半島は北海道の東に位置しており、オホーツク海に突き出すように伸びています。
また北半球で流氷がやってくる最南端の地とされ、ロシアのシベリアからやってくるこの流氷が、知床の雄大な自然を作り出す大きな役割を担っているのです。
流氷は単なる氷の塊ではなく、大量のプランクトンが閉じ込められていることをご存知ですか?
春になると氷が溶け出し、そこから溶け出したプランクトンが鮭やイカの餌となり、その鮭をヒグマが食べるという食物連鎖。
知床は多種多様な生き物が生存するための環境が整っているのです。
哺乳類では蝦夷鹿、キタキツネなど63種、鳥類では絶滅危惧種のオオワシなどをはじめとして260種以上も存在しています。
そんな野生動物の楽園である知床には、「知床八景」と呼ばれる知床を代表する景観があります。
「知床五湖」を始めとする滝や岬などがあり、遊歩道を散歩したり晴れた日には北方領土の国後島も望めるドライブコースがあったりと、知床の地でしか経験できないことがたくさんあります。
またガイドさん付きの観光も充実しています。
シーカヤックや流氷ダイビング、野生動物ウォッチングなどの体験もできます。
平泉ー仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群ー
2011年6月に世界遺産登録された平泉。
平泉町は岩手県の南部に位置し、平安時代に「奥州藤原氏」という藤原一族によって栄えた平泉文化があります。
それは戦争のない平和な国づくりに努めたものでした。
初代の藤原清衡は若い頃、戦乱で大切な家族を亡くしています。
清衡はその経験から、「亡くなった人が極楽浄土と呼ばれる天国のような場所に行けるように」という思いで、平泉の地を「仏国土」にすることを目指しました。
そんな思いで清衡の時代に建てられたのが世界遺産に登録されている「中尊寺」。
それに続き、2代目の基衡が「毛越寺」を、基衡の妻が「観自在王院」を、3代目の秀衡が「無量光院」を造りました。
そしてこの4つの寺には浄土庭園が造営されており、初代の清衡が思い描いた「極楽浄土」が表現されています。
2011年に東日本大震災で大変な時期にあった東北。
そんな中、同年6月に平泉の世界遺産登録が決定されたことはとても明るいニュースになったはずです。
平泉の観光の見どころは特に「中尊寺」と「毛越寺」。
中尊寺には黄金に輝く金色堂があり、歴史の教科書で知っている人も多いかと思います。
本堂だけでなく縁結びスポットの阿弥陀堂など見る場所がたくさんあり、2時間ほどゆっくり楽しめます。
毛越寺には美しい浄土庭園が広がっており、当時の極楽浄土への祈りが目に見えて感じることができるはず。
世界遺産に登録されている5つの「毛越寺」、「観自在王院跡」、「中尊寺」、「無量光院跡」、「金鶏山」は広大な敷地に広がっているので、JR平泉駅にあるレンタサイクルかバスで周遊するのがおすすめです。
縄文遺跡群(北海道・北東北)
北海道・北東北(青森県、岩手県、秋田県)の縄文遺跡群は、2021年7月に世界遺産登録されました。
縄文時代の採集・漁労・狩猟文化を基盤にした定住社会の生活様式、精神文化が評価されたのが理由です。
「遺跡群」とよばれるように北海道6つ、青森県8つ、岩手県1つ、秋田県2つ、計17つの遺跡が登録。
これらは都道府県を超えて同一の文化圏が形成されていたと言われています。
当時人々は石槍や落とし穴を用いて鳥獣の狩りをしたり、弓矢を用いて動きの速いイノシシや鹿を仕留めていました。
またそれらの動物の骨で漁労用の道具を作り始めます。
多様な食料を火で焼いたり土器で煮たりしながら栄養を摂取していたとも言われていますね。
このように移動生活だったひとつ前の旧石器時代とは違い、竪穴式住居を用いた定住生活へと生活様式を変化させていきました。
その17つの遺跡の中でも日本最大の縄文集落だった三内丸山遺跡は青森県に位置しています。
約1500年にわたって存在していたとされるこの遺跡は、120の掘立柱建物跡、700以上の竪穴式住居が発見されています。
集会が開かれていたと予想される大型建物が存在していたことや、墓地の存在から縄文文化の中心地であったことは間違いありません。
現在は17つの遺跡すべての周辺にガイダンス施設があり、遺跡の詳細や発掘調査に関する情報も紹介されています。
ガイドさんによる案内が聞ける施設もあるため、遺跡を訪れる際には理解が深まって楽しめそうです。
最後に
以上、北海道・東北エリアにある世界遺産を5か所ほどピックアップし、その歴史を踏まえながら紹介してきました。
他の地域と比べると自然に関するものが多い気がしますね。
ということは壮大な自然の景色に心が奪われること間違いなし。
北海道・東北エリアに旅行にいく人は、今回の記事を参考に旅先を決めてもらいたいですね。
日本が世界に誇る世界遺産。
その貴重な建築物や壮大な自然をぜひ体感してください。
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